リオデジャネイロ五輪がたけなわです。

スポーツ観戦に夢中になるのは、そこに人生が凝縮されているから。
平均寿命は延びましたが、スポーツ選手としてのピークは20代、がんばって30代まで。若い時期に頂点に立ったメダリストは、その後の人生の過ごし方がむずかしいのでは。
プロ野球界にも毎年、何人も期待の新人が入団してきますが、プロの選手としてプレーを続けられるのはごくわずか。『プロ野球戦力外通告』の取材を受けることもなく、球界を去っていく選手が大半でしょう。

アーウィン・ショーに『80ヤード独走(The Eighty-Yard Run)』という短編があります。
『夏服を着た女たち』に収録されています。

夏服を着た女たち (講談社文庫)

夏服を着た女たち (講談社文庫)

  • 作者: アーウィン・ショー,常盤新平
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 1984/05/15
  • メディア: 文庫
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学生時代、アメリカンフットボールの花形選手だった主人公。前途洋々の未来が開けていたはずなのに、その後の人生は失意の連続。1920年代から30年代の話ですから、世界大恐慌もあり、仕事は思うようにいきません。
やっとのことで得た仕事は、全国の大学を回る紳士服のセールスマン。初対面で『大卒だ』と思わせる容貌、そして過去のアメリカンフットボールでの栄光が採用の決め手でした。
彼は母校のグラウンドを訪れ、80ヤードを独走してタッチダウンを決めた瞬間を思い出します。

Fifteen years ago, on an autumn afternoon, twenty years old and far from death, with the air coming easily into his lungs, and a deep feeling inside him that he could do anything, knock over anybody, outrun whatever had to be outrun.

15年前、秋の日の午後。死からはるか遠い20歳。大気が楽々と肺に入ってくる。自分は何でもできる。誰にでも勝つことができるし、誰よりも早く走らなければならないときは、かならず走れるという深い感覚があった。

若い頃はこの短編のほろ苦さが実感できませんでしたが、年を重ねるにつれ、生きていくのはそういうことの連続だと思えるようになりました。
80ヤード独走ほど華やかな過去がなくても、誰しも若かりし頃を思い出しながら、老いていく我が身と折り合いをつけていくのです。

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札幌ドーム内の選手用食堂。